
杖の種類と選び方について詳しく解説!
「最近、ふらつくようになり、どんな杖を選べばよいかわからない」と感じたことはありませんか?杖を使ったことがある方や購入を検討している方は、一度はそう思ったことがあるかもしれません。杖の選び方や使い方、調整方法などは誰かにしっかりと教えたもらう機会は意外と少ないものです。
そこで今回は、そのような方のために、当院の理学療法士(以下:PT)が杖の種類や選び方、正しい使い方について、2部構成で解説します。
第一弾となる今回は「杖の種類と選び方」、次回は「正しい杖の使い方」について解説します。
この記事でわかることは、以下の通りです。
・杖の役割
・杖の種類
・杖の選び方
目次
杖の役割について
「転ばぬ先の杖」という言葉があるように、杖は転倒予防を目的として使用されます。杖には、以下の役割があります。
・歩行能力の安定化
・体重をかけられない場合や、かけられる範囲に制限がある(以下:免荷)場合でも移動が可能になる
・生活の質(QOL)の向上
・健康の維持・向上
だだし、すべての杖がすべての人に適しているわけではありません。
杖にはさまざまな種類があり、障害の程度や筋力などに応じて、適切なものを選ぶ必要があります。
杖の種類について
杖といえば、ドラッグストアやホームセンターなどで見かける一本杖を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?しかし、杖にはさまざまな種類があり、それぞれに適した使い方があります。
まずは、代表的な杖について紹介します。
当院で取り扱っている杖

左から順番に、以下の名前が付いています。
・T字杖
・4点杖
・松葉杖
・ロフストランド杖
・ノルディックポール
・サイドケイン
当院で扱っている杖でも、これだけの種類があります。
次にどのような方に適しているかを解説します。
どんな方に適しているのか
T字杖
まずは、T字杖について解説します。一般的には「一本杖」と呼ばれることがありますが、アルファベットの"T"の字に似ていることから、私たちは「T字杖」と呼んでいます。


T字杖は、ドラッグストアやホームセンター、介護用品店などでも販売しているため、比較的購入しやすいです。当院でも販売しており、使い方の説明や高さ調節も行いすぐに使用することができます。
以下のような方は、検討してもよいかもしれません。
・年齢とともに腰が曲がってきた
・運動不足で全身の筋力が落ちてきた
・転ばないように、念のため杖を持っておきたい
杖先の面積が小さく、心配な場合は以下のパーツがあります。

取り付けることで以下のメリットが得られます。
・支える面積を増やせる
・杖を立てかけなくても倒れない
・後付けできる(杖の太さにもよりますので、詳しくは担当スタッフやメーカーにご相談ください)
4点杖
T字杖が1本足に対して、4点杖は先端が4つに分かれているのが特徴です。T字杖に比べると、杖で支えられる力が大きく接地面積が広くなるため、より安定した歩行が可能になります。


また、4点全てをしっかり接地させずに体重をかけてしまうと、かえって転倒するリスクが高まることがあります。
4点杖は、歩行速度を高めるものではなく、安定性を重視した杖になっています。
松葉杖
病院だけでなく、映画やドラマなどのリハビリシーンでよく見かける杖ではないでしょうか。松葉杖は、免荷状態で使用されることが多く、足の骨折や捻挫、靭帯損傷などに対して用いられます。


医師の処方にて病院からレンタルされることがほとんどなので、個人的に購入することはほとんどありません。
ロフストランド杖
当院では、使用する頻度は少ないです。ロフストランド杖は、主に脊髄損傷などで脚が不自由になった場合に使用することが多い杖です。
脚の力が低下しているだけでなく、腕の力も低下している場合にも、腕全体で突っ張って身体を支えるようにして使用します。


ノルディックポール
ノルディックポールは、登山用のストックによく似た形をしています。通常は1本で使用することはなく、両手に持って使用します。


この杖の特徴は以下の通りです。
・両手で持つことにより、身体を支える面積が広くなる
・背筋が伸ばしやすくなる
・歩行のリズムが取りやすくなる
サイドケイン
この杖は、あまり見ることが無いかもしれません。当院で使用する場面として、脳出血や脳梗塞などによって麻痺が生じた方の歩行練習で装具を着用した状態で使用することが多いです。


それぞれのメリット・デメリット
重さ | 持ち運び | 金額 | 安定性 | |
---|---|---|---|---|
T字杖 | 軽い | 簡単 | お手頃 | 普通※1 |
4点杖 | まあまあ重い | かなり大変※2 | 普通 | 高い |
ノルディックポール | 軽い | 大変 | 高額 | 低い |
松葉杖 | まあまあ重い | 大変 | 普通※3 | 低い※4 |
ロフストランド杖 | 軽い | 大変 | 普通 | 普通 |
サイドケイン | 重い | 大変 | 高額 | 高い |
※2 物によっては場所をとる場合があります。
※3 ほとんど場合は病院からのレンタルになります。保証金や使用期間によって金額が異なります。
※4 ご高齢の方や使い慣れていない方は、かなり不安定になる場合があります。
杖の選び方について
次に、どの種類の杖がどんな方に向いているか紹介します。痛みやふらつきがある方
変形性関節症(股関節や膝関節)など痛みがある場合、痛みによって本来の筋力を十分に発揮できないことがあります。以下のような症状がある方は、T字杖の使用をおすすめします。
・歩行中にふらついてしまう
・歩幅が狭くなってしまう
・痛みによって上手く歩けない
・脚をすって歩いてしまう

免荷をする必要がある方
骨折や靱帯損傷、捻挫など体重をかけてはいけない方や体重をかける範囲が決まっている方は、松葉杖を使用します。両腕で体重を支えることで、ケンケンで移動したり制限範囲内で歩いたりすることができます。
上手く使えない方や高さ調整が必要な場合は、当院の理学療法士が一緒に練習し高さの調整を行います。

背中が丸くなることが気になる方
「歩いているうちにだんだん背中が丸くなってくるような感じがする」という方だけでなく、「特に痛みはないけどもう少しテンポよくあるきたい」という方には、ノルディックポールがおすすめです。杖の種類でも説明したように、両手で使用することができるため背筋が伸ばしやすくなったり、歩きのリズムを取りやすくなったりします。

よくある質問(FAQ)
実際のリハビリの場面でよくある質問を紹介します。Q:同じ杖でも金額が異なることがあります。やっぱり高い方がいいですか?
A:金額が高ければ良いというわけではありません。デザインや販売店などで多少の違いであります。値段が安くても、使いやすいものを選択していただければよいと思います。細かい性能については、担当のリハビリスタッフや販売店に確認してみて下さい。Q:手荷物になるので、できれば使いたくありません。それでも杖は必要ですか?
A:必ず必要というわけではありません。もし必要な方は、折り畳みのT字杖もあります。杖を外すタイミングに関しては、リハビリをしている方でしたら、担当スタッフと要相談となります。それ以外の方であれば、本編で述べた内容に当てはまらない方や杖を持って出かけてもほとんと使っていない方は無しでも良いかもしれません。
Q:病院で処方された松葉杖は購入しなければいけませんか?
A:基本的にはほとんど方が返却されますので、その必要はありません。ご購入を希望される場合は、担当スタッフにご相談ください。Q:見た目的にも杖を使うのは恥ずかしいです…
A:転んでしまい大きなケガをして、さらに大変な思いをしないように杖は使用した方が良いと思います。ですが、どうしても見栄えが気になる方は、スタイリッシュな杖やノルディックポールのようにアクティブに見える杖もあります。そちらを検討してみてください。Q:杖を使ってみたら、変な歩き方の癖がついてしまった感じがします。使う杖を間違えたのでしょうか?
A:なかには今まで使ったことが無い方が使用すると、そのように感じることがあります。また、使っている杖が間違えていなくても、杖の高さや使い方など正しく行えていないと、歩きにくさや杖が外れた時に癖がついてしまうことがあります。次回、杖の使い方について解説しますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。まとめ

今回は、杖の種類と選び方について解説しました。
当院で使用している杖は、主に6種類あります。
杖にはそれぞれ特徴があり、障害の程度や筋力など、身体状況に応じて適切なものを選ぶことが大切です。
福祉用具を扱う業者ごとにカタログを発行しているので、購入を検討している方は確認してみてください。
次回は、正しい杖の使い方について解説します。