筋トレを続けるだけで、“あと2,000歩”多く歩けて、“あと30分”長く動けるようになるかもしれません。
監修:中田病院リハビリテーション部 理学療法士 外来班 主任 栗原
執筆:中田病院リハビリテーション部 理学療法士 人工関節班 遠藤

この記事では、退屈になりがちな入院生活や退院後の自宅生活でも実践できる、人工膝関節後の自主練習をご紹介します。
対象となるのは手術を受けた方だけでなく、手術をしない選択をされた方も含まれます。病室や自宅、さらには旅行先でも取り入れることが可能です。
自主練習を行うことで回復のスピードが早まり、日常生活をよりスムーズに送れるようになるかもしれません。
前回の「ストレッチ編」に続き、今回は「筋トレ編」。ストレッチは関節の柔らかさを保つために必要ですが、実際に身体を無理なく動かすためには筋力が欠かせません。その具体的な方法を紹介します。
この記事で紹介している内容は、すべての方に当てはまるものではありません。
膝の痛みが強い方や、現在リハビリ中の方は、主治医またはリハビリスタッフと相談のうえ実施してください。
目次
なぜ筋トレが必要なのか
術後6ヶ月には1日あたりの歩数が約2,000歩増え(1)、中〜高強度の活動時間も30分近く増える(2)――そんな研究報告があります。これは、「もう少し動けたら…」という願いが、「本当にできるようになる」かもしれない現実的な変化です。
想像してみてください――
家族から「前みたいに一緒に出かけたいな」と言われると、少し心が痛むこともあるかもしれません。
ですが、正しい方法で筋トレをコツコツ続けることで、今までできなかったことができるようになるかもしれません。「やりたかったのに我慢してきたこと」――たとえばお孫さんとの散歩や買い物、趣味のお出かけ――を、また一つずつ取り戻すチャンスが巡ってきます。
今こそ、“動ける自分”を育てて、もう一度、毎日を楽しんでみませんか?
ということで、ここからは筋トレの効果や実際のメニューを紹介していきます。
筋トレの効果
人工膝関節の術後の経過をよくするためには、筋力強化は欠かせないものです。筋力強化を行うことで、短期的な効果だけでなく、長期的な効果も得られています。
詳しく説明すると、マッサージや関節の曲げ伸ばし、歩く練習をするだけのリハビリよりも筋トレも行った方が3ヶ月、12ヶ月後の治療成績が良かった(3)との報告があります。
先ほど述べたように、歩数や歩行時間などを伸ばすには、筋トレが不可欠なんです!!
さらにそれだけではなく、術後の筋力強化が、疼痛軽減や可動域改善、身体機能改善が認められています。(4)(5)
つまり、筋トレは「今の回復を早める」だけでなく、「将来の生活の質を守る」「やりたいことをできるようにする」ためにも大切な取り組みなのです。
自宅でできる自主練習(筋トレ)
前回の記事でもお話したように、病室やご自宅で自主練習を頑張っている方のほうがリハビリの経過は良い傾向にあります。伸び幅が少ない方でも、今の現状より悪くならないように踏みとどまっている、変化は小さいけど着実に良い方向に進んでいる場合があります。セッティング
まずは、基本中の基本の運動からです。この運動は人工膝関節をした方だけでなく、手術をしない選択をした方、靭帯や半月板の手術をした方など年齢関係なく、膝のリハビリでは必須といってもよいくらい大切です。膝を伸ばす筋肉は、太ももの前側に4つあります。
その中でも内側にある、「内側広筋」という筋肉のトレーニングを紹介します。
内側広筋を鍛える理由は以下の通りです。
・内側広筋内の脂肪(IMAT)が多いほど、痛みが強く機能が低下した(6)
・IMATが増加していくほど、その後の機能が低下していく
つまり、VMを鍛えることで膝の機能低下を防ぎ、疼痛の軽減が期待されます。

セッティングを行う際は、必ず力を抜いたところから始めてください。
力が抜けているかわからない場合は、下記のメニューにて確認してみてください。

回数に慣れてきた方や余裕がある方は、1日10回を10セット(計100回)を目標に頑張ってみてください!
スクワット
続いてスクワットです。スクワットは自己流になりやすいメニューです。なのでまずは、解説付きの動画をご覧ください。
スクワットは膝の運動ではなく、股関節を使った運動です。
やり方を間違えてしまうと、膝や腰を痛めてしまうことがよくあります。
例えば、内股になったり(写真の左側)、膝だけ曲げてしまったり(写真の右側)してしまうことで、思うような効果が得られません。むしろ、膝などを痛めてしまうことがあります。

正しいフォームは、しっかりと背筋を伸ばした状態で股関節を曲げることです。
具体的には、上半身が前、お尻が後ろ、膝が前というバランスをとるイメージです。

いきなりスクワットが難しいという方は、イスを使って立ち座りでもよいです。
その他のポイント
動画にはありませんが、体重をかける場所にもポイントがあります。「内くるぶしと外くるぶしを足の裏に向か って真っすぐ下ろしたときに、足の裏で交わるところ」で体重をかけます。

つま先で体重を支えてしまうと、上記の写真右のように膝だけ曲がってしまいます。
逆にかかとに体重をかけすぎてしまい、つま先が上がってしまうと、後ろに倒れてしまうので足の裏全体はしっかりつけましょう。
日常生活での応用
実はスクワットの動きは、日常生活に取り入れることができます。例えば、
✅イスやトイレ、ベッドから立ち上がるとき
✅洗濯物のカゴや荷物を持ち上げたり降ろしたりするとき
✅床からものを拾い上げるとき
実は、日常生活にはスクワットの動きを必要とする場面がたくさんあります。
はじめは意識して行うことは難しいと思いますが、実際に取り入れることで運動にもなり身体の負担を減らすことができます。
習慣をつけてしまえば、あとは楽なのでぜひ取り入れてみてください。
段差を使った練習
ストレッチやセッティングで伸びやくすなった膝は、体重をかけた状態でも伸ばせるようにする必要があります。体重をかけた状態で膝を伸ばすには、‘‘股関節‘‘を伸ばせるようにしなければいけません。
つまり、股関節が伸ばせないと伸びる膝も伸ばせなくなってしまいます。
見た目は難しいと思いますが、基本はスクワットと同じです。
このメニューは手術直後の方や痛みが強い方には、負荷が高い場合があります。
行う際は、担当スタッフと相談しリハビリでよく練習してから行ってください。
まとめ
今回は、筋トレ編を紹介しました。関節の曲げ伸ばしや歩く練習も必要ですが、良い術後の経過をたどるには筋トレも大切です。
無理のない範囲で、ぜひがんばってみてください!